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只许州官放火,不许百姓点灯

只许州官放火,不许百姓点灯 [zhǐ xǔ zhōu guān fàng huǒ,bù xǔ bǎi xìng diǎn dēng]

州の役人には放火を許し、庶民には灯を点すことも許さない。
もとは北宋の田登の故事に基づき、権力者が恣意的な取り締まりを行うこと。また一般に、筋の通らない自分勝手な言動をすること。

出典
南宋の陸遊『老學庵筆記』巻五にある常州の太守田登の故事より。原文は下記。

田登作郡,自諱其名,觸者必怒,吏卒多被榜笞。於是舉州皆謂燈為火。上元放燈許人入州治遊觀,吏人遂書榜揭於市曰:本州依例放火三日。
田登は長官になると、自分の名前を避諱(ひき)させ、違反する者がいると必ず怒り、多くの役人が鞭打たれ処罰された。そのため州では誰もが「燈」を「火」と言うようになった。上元の灯籠祭りで州の役所を開放し人々の参観を許可する時、役人はついにこう書いた札を市に掲げた。「本州は例年通り三日間放火する。」


作郡 ある地方の長官になること。この時田登が就任したのは常州の太守。
自諱其名 自分でその名前を避諱の対象とした。避諱については日本語版wikipediaなどにも詳細な説明があるのでそちらを参照。簡単に言えば、目上の者の本名を直接言ったり書いたりするのは失礼だとして使用を避ける習慣。皇帝などの場合は文書の文字をすべて似た意味の違う文字で置き換えたり、この例のように音が同じ文字まで避けられたりすることもあった。
皆謂燈為火 「燈」が田登の名前「登」と同音なので、避諱によって「火」と言い換えたということ。
上元 元宵節のこと。正月十五日の祭り。華やかな灯籠を掲げて鑑賞する風習がある。
州治 州の役所。

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元宵節に灯籠を掲げる習慣は今でもあり、各地でさまざまな「灯会」が行われている。

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