中国の歴史学者有志による反戦声明
次のような朝日新聞の記事が出ていた。
(引用)――――――――
https://news.yahoo.co.jp/articles/3d69b8f9120f489da0a0f428a701da1341ee815d
中国の学者有志が戦争反対の声明発表→まもなく削除され閲覧不能に
ロシア軍によるウクライナへの侵攻を巡り、中国の複数の歴史学者が26日午後、ロシア政府とプーチン大統領に対し戦争の停止を呼びかける声明を、中国のSNSで発表した。中国政府はロシアの軍事行動を侵攻とは認定しておらず、北大西洋条約機構(NATO)の拡張に反対するロシアの立場にも支持を表明している。政府の姿勢とは一致しない学者らの提言は、まもなく削除され、閲覧不能になった。
「ロシアのウクライナ侵攻と私たちの態度」と題した声明を発表したのは、南京大学の孫江教授ら歴史学者5人。「さまざまな意見がある中で、私たちも声を発する必要を感じた」としたうえで、「ロシアがウクライナに対して起こした戦争に強く反対する。ロシアにいくら理由があっても、武力による主権国家への侵攻は既存の国際安全保障システムを破壊するものだ」と批判した。
さらに、孫氏らは「ウクライナ国民の国を守る行動を断固支持する」とし、ロシア政府とプーチン大統領に対し「戦争を停止し、交渉で紛争を解決するよう強く呼びかける」と求めた。
王毅(ワンイー)国務委員兼外相は26日、中国外務省のウェブサイトでウクライナ問題に対する中国の基本的な立場を発表。「現在の情勢は見たくないものだ」として対話による解決を促す一方、「NATOが東へ拡大している状況下で、ロシアの安全保障面での正当な訴えは当然重視され、適切に解決されるべきだ」と、ロシア寄りの姿勢もにじませた。中国政府は、ロシアの行動が侵略にあたるかどうかについても、「我々は結論を急がない」(華春瑩外務省外務次官補)と言及を避けている。
声明は、中国政府の姿勢については論評していないが、「インターネットサービスの管理規定に違反している疑いがある」との理由で間もなく削除された。
(引用終)――――――――
この記事に原文の画像があったので、下に全文を訳してみた。中国内で非政府の立場から政治的発言をするのは制約が多く、この声明も削除されてしまったようだが、それでもいろいろな声を上げている人たちがいる。日本にいて、こんな遠くで声明を出したりデモをしたりしても意味があるのか?と無力感を抱いたりするのも無理はないが、「反戦」のような声でさえ気軽には上げられない場所も多いこと、気軽に声を上げられる環境を維持するためにも、今ある権利や自由は積極的に使い続けなければいけないことを思う。
(訳)――――――――
ロシアのウクライナ侵攻と私たちの態度(2022年2月26日)
戦争は暗闇の中で始まる。
2022年2月22日早朝(モスクワ現地時間21日夜)、ロシア大統領プーチンは命令に署名し、ウクライナ東部の民間武装組織自称ドネツク人民共和国とルガンスク人民共和国を独立国家として承認すると宣言し、また24日には陸海空軍を派遣してウクライナに対する大規模な侵攻を開始した。
国連の常任理事国、核兵器を保有する大国が、弱く小さな兄弟国に襲いかかったことに、国際社会は震撼している。戦争はどこへ向かうのか? 大規模な世界戦争を引き起こすのか? 歴史上の巨大な災厄はしばしば局所的な衝突に始まる。国際世論の憂慮はやまない。
この数日、インターネットでは戦況がリアルタイムで報道されている。廃墟、砲声、難民……ウクライナの傷口は私たちにも深い痛みとして突き刺さる。かつて戦争による蹂躪を味わい尽くした国家として、家が破壊され人が亡くなり、餓死者が満ちあふれ、国土が分割され賠償が課される……こうした苦難と恥辱は私たちの歴史意識を形作っている。私たちはウクライナの苦痛を我がことのように感じる。
この数日、反戦の声が各地で起こっている。ウクライナの人民は立ち上がり、ウクライナの老母が声を張り上げて招かれざる客を叱責し、ウクライナの老父が戦争の悪を痛切に訴えている。9歳のウクライナの幼女が涙声で平和を呼びかける。ロシアの人民も立ち上がり、モスクワで、サンクトペテルブルクで、その他の都市で、市民たちは街を行進し、科学者たちは声明を発表した。平和、平和、反戦の声は国境を越え、人の心を震わせている。
この数日、私たちは事態の進展に強く関心を寄せ、過去を考え、未来を思っている。多くの声が飛び交う中、私たちは私たちの声を上げる必要があると感じた。
私たちは、ロシアがウクライナに対して発動した戦争に強く反対する。ロシアにどれほどの理由があり、いかなる口実があろうと、武力をもって一主権国家に侵攻することはすべて国連憲章を基礎とする国際社会の規則を踏みにじるものであり、現在の国際安全システムを破壊するものである。
私たちは、ウクライナ人民が国家を防衛する行動を断固支持する。私たちはロシアの武力行為が欧州及び全世界の情勢に混乱をもたらし、さらに広範囲の人道上の災厄を引き起こすことを憂慮している。
私たちは、ロシア政府及びプーチン大統領が戦争を停止し、交渉によって紛争を解決することを強く訴える。強権は文明の進歩の成果と国際正義の原則を一朝にして破壊するのみならず、ロシア民族に巨大な恥辱と災厄をもたらすであろう。
平和は、人の心の渇望から始まる。私たちは、不義の戦争に反対する。