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日々の学習、ときどき雑談

红颜祸水

红颜祸水 [ hóng yán huò shuǐ ]

美しい女性が災いを招くこと。

「红颜」はこの成語では美しい女性という意味だが、女性に限らず若者、またその健康で美しい様子を指すことも多い。日本の浄土真宗で唱えられる「朝(あした)には紅顔ありて夕(ゆうべ)には白骨となれる身なり」の「紅顔」はこの意味ですね。
「祸水」は災い、災いを招くものということだが、そもそもの出典が漢の成帝の寵愛を受けて帝国の滅亡を早めたとされる趙飛燕・趙合徳姉妹を描いた『飛燕外伝』。そこに、趙合徳を指して「此禍水也、滅火必矣」(これは災いの水です、必ず火を滅ぼします)とあるのによる。「火を滅ぼす」とは五行思想によれば漢は「火」の徳を持つとされるため、ここでは漢のこと。同じく五行思想で火を滅ぼす力を持つのが水なので、「祸水」と言われているのだという。つまり出典からして、これ一語で「災いを招く女性」という意味を含む語だと言える。

最近、ニュースのこんな見出しでこの成語を見かけた。

"是红颜祸水还是政治的牺牲品?韩国首尔市长朴元淳死亡原因是什么"
(美女に溺れたか政治の犠牲か? 韓国ソウル市長朴元淳が死亡した原因とは)

中国の歴史では美しい女性が君主を惑わせて国の滅亡を招いた、というのが物語の一つの典型で、この趙飛燕の他にも「災い」扱いされている女性は数知れない。「傾国」(国を傾ける)や「傾城」(都市を傾ける)が美女の代名詞になっているほどだ。
この「红颜祸水」もそういう伝統の上にある成語だが、女性が政治から排除されていた過去の社会で、君主が自ら女性への愛着に溺れたのを「女性が災いを招いた」と解釈すること自体、いかにも男性中心的な視点だろう。その成語が今でもこういうふうに報道で使われるのか……とちょっと考え込んでしまった。
伝統を背負った成語で、まだ使われてもいるようなので覚えてはおくけれど、そろそろ現役は退いてもらった方がいいのではと思える言葉の一つ。

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