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日々の学習、ときどき雑談

尚方宝剑

尚方宝剑 [shàng fāng bǎo jiàn]

皇帝権力の象徴とされた宝剣。皇帝から処罰などをの権限をを与えられていること。独自の裁量で行動を許されるお墨付きを得ていること。お咎めなし。

「上方宝剑」と書かれることもある。「尚方」は秦や漢の宮廷で器物を扱った部署。そこで皇帝専用に作られた剣ということで、「尚方宝剑」は皇帝の権力を象徴する。
後に小説や戯曲で、この剣を持つ臣下は独断で人を斬ること(先斬後奏)を皇帝から許されているというように描かれたため、「尚方宝剑」は上層から独自の裁量を許されていること、お墨付きを得ていることを意味する成語となっている。

先斩后奏
https://anatadehanai.hatenablog.com/entry/2021/08/26/235742

日本語の語彙で言えば、やはり「お墨付き」という感じかなと思う。また、必ずしも史実ではないが時代劇などに多用され、大勢が共通のイメージを持っているという意味では、おそらく水戸黄門の印籠とか「葵の御紋」とかに相当するのではないかと推測。お忍びで悪代官の罪を暴いた大臣が「これが目に入らぬか!」と抜き放つモノ、というイメージで遠からずだと思う。

用例
一切只要冠以防疫的名义就是尚方宝剑了? ​​​
何もかも防疫と名付ければお咎めなしなのか?

这世上,岁数大不是尚方宝剑,法律和事实才是。
この世の中、年をとっていれば何でもお咎めなしというわけではない。法律と事実が重要だ。

巡视组的也贪污,真特么该死啊!拿着尚方宝剑去干坏事不是!
巡視組の人間まで汚職をするとは、まったく許しがたい! 政府のお墨付きを手に悪事をしてるんじゃないか!

最近、中国で巡視組という汚職などを取り締まる部署の官僚が汚職をしていたという報道があり、それに怒っているネット民のコメント。他にもこういう表現を使っているコメントは多く、巡視組官僚は「欽差大臣」(皇帝から派遣された大臣)に喩えられたりしている。皇帝はいなくなり体制が変わっているはずでも、こういう連想がすぐ出てくる程度には、中国の(あるいは人間社会一般の)なかなか変わりにくい構造はあるのだろう。

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