「中国語」とか、「漢文」とか

日々の学習、ときどき雑談

中国、デルタ株流行もなんとか抑え込みへ

中国内では今回のデルタ株流行もなんとか抑え込みに成功しつつある様子。その意味で日本などに比べて全く「失敗」しているとは思えないのだが、下に貼ったのはそれでもある程度の規模の流行が発生してしまった揚州の事例についての解説。長年上海で働く医師の人が紹介してくれている。
現在の中国の新型コロナ対策がどのように行われているか具体的に知りたい人には参考になると思う。

揚州のクラスタ発生の失敗から学ぶこと
(藤田康介)
https://note.com/mdfujita/n/nb8a22b027bd4?magazine_key=m04e296cb7c9c

"確かに当時の揚州市では封鎖管理がうまく行っていませんでした。たとえば、上海などの中リスクエリアに設定されると、買い物どころか、建物の外にも出られなくなりますが、どうやら揚州では当初はそこまで厳格ではなく、実際にこそこそと買い物に出ている人もいたようです。これでは封鎖エリアに穴が発生していることになり、感染者を増やしてしまいます。その為、その後は順に規制が強められていきました。

第1回 7/31から揚州市中心エリアでは確定例・無症状感染者が出たエリアでは住宅地の封鎖管理、感染者の出た建物では住民の集中隔離。封鎖管理された住民は外出禁止。

第2回 8/3から揚州市中心部エリアで封鎖管理されていない住宅地・村も封鎖管理実施。出入り口を1カ所だけ残して各世帯1日1人だけ出入り可能にする。

第3回 8/8から 封鎖管理エリアでは、3〜5日に1回、各世帯1人だけ出入り可能にさらに厳格化。

第4回 8/11から社区管理コントロールエリアで「黄区」を設置し、揚州で感染者が集中して発生しているエリアで、6カ所の疫情重点管理エリアを設置し、住民が住宅地外へ出ることを禁止。特にこの中でも封鎖管理されている住民は厳格に外出禁止。

第5回 8/13から疫情重点管理エリアをさらに強化、区域内で封鎖管理等をされている住宅地の住民は一切外出禁止。"

"8/17、揚州市ではさらに厳しい社区管理コントロールがはじまりました。第6回目の規制強化ですね。現在封鎖管理されているエリア全域で封鎖管理が強化され、マンション住まいは建物から出られず、村は村の範囲から出られず、平房住まい(長屋みたいな建物)の場合は、その巷から出られなくなりました。一方で、該当エリアの党幹部・教師・国営企業に働く人は、ボランティアとして活動し、社区(自治会のようなもの)の指示で住民達の生活に必要な物資の配送に従事することになりました。同時に、146万人対象に再度PCR検査をすることが決定しました。"

なお、この記事でも言及されている南京から揚州に移動して流行源となってしまった毛さん。最近のニュースではどうやら他人の健康コードを借りて検問をすり抜けたらしいと言われているが、中国ではこのように「防疫を妨害し」結果的に流行を広げてしまった人は逮捕と刑事罰の対象になる。すでに各地で何人も判決が出ていて、数か月から一年半程度の懲役刑になっている例が多い。また、名前の一部を伏せたりはしつつもほぼ個人特定可能な報道がされるので、「こいつのせいで大変なことになった」と世論からは袋叩きになる。
日本では防疫非協力の刑事罰化には医学界が反対声明を出すなど批判が強く、その理由として感染者が差別や攻撃の対象になる、それを恐れてかえって非協力的な人が増える、などが挙げられる。これは過去のハンセン病対策などの反省を踏まえた意見なのだが、中国にはおそらくこういう発想はなく、説明しても理解されなさそうだ。むしろ、こういう違反者の特定と処罰、それを積極的に公開することによって「一罰百戒」的に非協力を減らせるという考え方なのではないかと思う。日本の感染症対策が「協力のお願い」であるのに対し、命令であり違反取り締まりである中国では、基本的な考え方がやはり大きく異なる。
流行抑え込みの実績としては中国の政策は極めて優秀、しかしこれを日本で真似るのはいろいろ条件が違いすぎて困難、とまた何度目かの同じ感想を抱く。

この揚州の例だけでなく、この人の一連の文章は中国のコロナ対策の紹介としてわかりやすく信頼度も高いと思う。特に強い自分の主張は交えず、中国内の情報源と長年の在住の経験に基づいて淡々と報告してくれている。

中国の新型コロナ対策
https://note.com/mdfujita/m/m04e296cb7c9c

ただ、中国はとにかく広いので、一部の流行地での事例が他の地域にも当てはまるとは限らない。私のいる所もほとんど流行が発生していないので、高リスク地区の状況などはこういう報告を通して知るだけだ。それから、この人の書き方は全体にやや「表向き」寄りで、実際の現場はもうちょっと混乱しているだろうなと感じるところはある。