「中国語」とか、「漢文」とか

日々の学習、ときどき雑談

草泥马

草泥马 [ cǎo ní mǎ ]

wikipediaなどの日本語記事が非常に充実していて、一通り読んでもらえば概要はわかると思う。
https://ja.m.wikipedia.org/wiki/%E8%8D%89%E6%B3%A5%E9%A6%AC

簡単に言えば、「肏你妈 cào nǐ mā」という罵り言葉が2009年の中国政府によるネット規制の対象語になったため、発音の似ている別の字で置き換え、さらにそれを架空の動物としてネタ動画などが作られ一世を風靡したということ。

ここにない情報で私が付け加えられるものといえば、「草泥马之歌」がアニメ『蓝精灵』の主題歌の替歌だということくらいだろうか。
リンクは切れるかもしれないので適宜検索し直してほしいけれど、上が「蓝精灵之歌」、下が「草泥马之歌」。

https://m.youtube.com/watch?v=jYK7A4d1Ruk

https://m.youtube.com/watch?v=01RPek5uAJ4

アニメ『蓝精灵』はアメリカで1981年から放映された『The Smurfs』の吹き替え版で、1986年から中国でも放送されたという。その主題歌が「蓝精灵之歌」として有名な童謡の一つになっている。私はアニメは見たことがないのだが、主題歌は中国語を勉強し始めた頃に童謡集で聞いた。おそらく中国に住んでいれば大多数の人が聞き覚えのある歌なのだろう。だから替歌にも使われるわけだ。

しかし、この2009年の規制に対抗した中国ネット民の熱量はすごいね。それでも検閲の強化自体を覆すことはできず、グレートファイアウォールなるネット版長城の修築は今も営々と続けられているわけだけれど。

面白いのは、「草泥马」は中国政府お墨付きというべき百度百科にもちゃんと記事が載り、経緯も書かれていること。

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也有观点认为,2009年国家发起整治互联网低俗之风专项行动,大量网站因为低俗而被叫停,脏话被屏蔽,引发一些网民的不满,于是网民发明了用“草泥马”等谐音字的脏话绕过网站的屏蔽,并逐渐创作出了以“草泥马”为代表的“十大神兽”。

(訳)
またある見方によれば、2009年に国家がSNSの低俗な風潮を取り締まるプログラムを開始したことで、大量のサイトが低俗だとして停止され、汚い罵倒語がブロックされて、一部のネット民の不満を呼び起こした。そこでネット民は「草泥馬」など音が近い字を使った罵倒語でブロックを回避することを思いつき、またやがて「草泥馬」を代表とする「十大神獣」を生み出すようになった。


現在の微博で検索してみると、「草泥马」は次のような使われ方をしている例も多く面白い。

心中顿时无数只草泥马狂奔而过…(途端に心の中を無数の草泥馬が駆け抜けた…)
每次看到这些事故发生的时候心里万只草泥马路过!(こういう事故が起きるのを見るたびに心の中に一万匹の草泥馬が通り過ぎる!)

これ、元の意味の罵倒語が心に強く湧き上がったということだが、「草泥马」という言い換えを活かして、たくさんの「草泥马」が心を通り過ぎたというような表現をしている。日本のネットスラングで言えば、「笑う」が「w」となり「草」と表現されるようになった後、笑ったことを「草生えた」、大笑いしたことを「大草原」と言うようになったようなものだろう。こういうスラングの生成進化と、それが言語が違っても同じようなプロセスで現れているのを見るのは本当に面白い。

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