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日々の学習、ときどき雑談

蔡英文のfacebook投稿

先日の黄之鋒たちの実刑判決について、蔡英文facebookでコメントを書いていた。ちょっと読んでみますか。

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"今日香港から入った情報によると、「香港衆志」の元秘書長黄之鋒、元主席林朗彦、元メンバーの周庭が去年の抗議行動のため実刑判決を受けたとのことです。

この三人の香港の若者は、香港の人民が民主を闘い取ろうとする集団的意志を代表しています。非常に遺憾です。この判決は香港人が民主を求める声をまたしても強権で抑えつけたものです。

台湾もかつて民主への道の上で闘ってきました。私たちは恐れのために心の中にある理想の台湾を忘れることはありませんでした。暗い夜はかならず過ぎ去り、夜明けがやってきます。香港の友人たちが恐れのために心の理想を忘れてしまわないことを願います。今はまだ絶望する時ではありません。民主の台湾は、かならずこれからも香港人を支え、民主を支え続けます。"

非常に明確なメッセージ。ベタな喩えがこういう時には効くようにも見える。そして香港を応援しつつ、すかさず「民主の台湾」をアピール。

蔡英文のコメントと言えば、去年の六四に英文でツイートしていたこれにもちょっと唸った。

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"世界中で一年は365日です。でも中国では、その中の一日が毎年意図的に忘れられています。台湾にも、かつてそのように暦から消された日々がありました。しかし私たちはその日々に光を当てようと努めてきています。中国もまた、と言える日が来ますように。"

ここでも、中国に言及しつつ台湾は過去の負の歴史に向き合っているということをアピールしている。台湾で二二八などの検証が進められているのは事実なので、嘘ではない。

私は別に蔡英文のファンでも何でもないけれど、この政治家のこういうコメントの出し方、SNSの使い方は巧いなと感じさせられる。facebookは中文で書いているが、よく知られているようにtwitterは主に英語で発信。日本の話題なら日本語で書いたりもする。ネイティブから見て間違いのない自然な日本語だ。蔡英文は英語は自分で書けるはずだが日本語もできるとは聞かないので、有能なスタッフを雇って書かせているのだろう。著名な政治家のツイートなど別にいちいち自分で書く必要はない。きちんとタイミングを逃さず、影響や与える印象を計算してスタッフに適切な指示を出せるかどうかが重要だ。蔡英文はそれを意識的にやっているんだなというのが伝わってくる。
一政権(←ここで表現に迷うよね)のトップともなれば当然のようにも思うけれど、日本の自民党から誰が首相になってもできそうな気がしないし、アメリカでもトランプのツイートは運営に規制されかねないひどさだった。それで言えば、そのトランプにツイッターでからんで喧嘩を始めようとする中国の外交官も大人気がなくひどかった。大国の代表が何をやっているのか。そのへんと比べると、蔡英文のスマートさはやはり印象的ではある。

しかし、香港を横目で見ながら内心どんなことを考えているんだろうな。「恐れるな」と言っても現実的にいろいろな危機の可能性を計算はしているだろう。多くの血が流れるような事態は決してあってほしくないのだけれど。