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日々の学習、ときどき雑談

讳莫如深

讳莫如深 [huì mò rú shēn]

強く避けられ隠されている。タブーとして扱われている。言及がはばかられている。

出典
『春秋穀梁伝』莊公三十二年の記述より。『春秋穀梁伝』は孔子の手になると伝えられ、儒家の経典である歴史書『春秋』に対する注釈書の一つ。『春秋』自体の記述を「経」というのに対し、注釈部分を「伝」という。
この成語の出典となっているのは、「公子慶父如齊」(公子慶父斉にゆく)という経文に対して付けられた下記の伝文。

此奔也、其曰如、何也。諱莫如深,深則隱。
これは「奔」(逃げた)のだが、それを「如」(行った)と言っているのはなぜか。忌み憚るところがきわめて重大であり、重大であるから隠すのだ。

公子慶父(未詳-前660年)は魯の莊公の弟だったが、兄の妻と密通したり、莊公の死後には後を継いだ莊公の子二人を相次いで暗殺して自分が位に就こうとしたりした結果、支持者を失って斉の地にある莒(きょ)に逃亡することになった。「公子慶父如齊」はそのことを述べているが、あまりに深刻な魯国の醜聞で言及もはばかられるため、孔子が「奔」ではなく「如」と書いた、というのがこの伝の注釈。この部分に限らず、『春秋』はこういう文字の使い方から事件に対する孔子の見解が読み取れるとされ、これが「春秋の筆法」と呼ばれる。

慶父についてはwikipediaの項目など参照。
https://www.weblio.jp/wkpja/content/%E6%85%B6%E7%88%B6_%E6%85%B6%E7%88%B6%E3%81%AE%E6%A6%82%E8%A6%81

兄の子を相次いで暗殺して位を奪おうとした奸臣として悪名高く、「慶父不死、魯難未已」(慶父が死なないかぎり魯の災難はやまない)は悪の親玉を退治しなければ問題は解決しない、という意味のことわざになっている。

用例
对漏毒气事件,厂方讳莫如深,不愿接受采访。
毒ガス漏洩事件について、工場側は全く言及せず、取材を受けようとしない。

我们在这个世界上活着,有多少事情讳莫如深,必须缄默其口。
この世界に生きていて、触れるのが憚られ口をつぐまなければならないことはどれほどあることだろう。

这些数据一直都是被政府讳莫如深。
これらのデータは一貫して政府からタブー扱いされている。

关于他为什么遭到处分,他总是讳莫如深,拒绝回答。
なぜ処分を受けたかについては、彼はいつも触れようとせず、答えを拒否していた。

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